短編夢
泣いているんじゃないですか?(赤司/男主/受主/前編)
とても俺様な生徒会長様がいる。
入学して間もない俺にこう言い放った。
生徒会に入れ、と。
ちょっと意味がわからなかったので、丁重にお断りしたが、それが彼の逆鱗に触れたようで。
それはもう盛大に根回しをして、断れない状況を作られ、現在俺は2年になり1年以上生徒会としてあくせく働いている。
『会長、この前のアンケート回収結果です。』
「ありがとう、早かったね。」
元凶は、この人、赤司征十郎。
1つ上の先輩で、容姿端麗頭脳明晰、バスケ部部長と来ているのだから、凄い。
だからこそ、何で俺をピンポイントで推薦したのか。
雑用が欲しかったのか。
「どうした、じっと見て。何か付いてるか?」
『いいえ。会長もお疲れなら、早く帰って下さいね。』
「お前を残して帰る筈ないだろう。」
『・・・各部活の部費の調整したら帰りますので、もうちょっと待って下さい。』
「ああ。」
どうせ帰って下さいと言っても上手く丸め込まれるだろうから、素直に要件だけ伝えておく。
『・・・人の顔じっと見るのやめて頂けますか。』
会長は、立ち上がって他の椅子に座り、俺に視線を向けてきた。
「お前だってさっき見てただろう。いい会計に巡り会えたと思っていたのさ。」
『巡り会えたという感じじゃなかったですよね、会長様。』
「それは嫌味かい?」
愉快そうに笑われた。
『それなりに。』
「ははっ・・・」
更に声を出して笑うということは、本当に面白いと思っているんだろうな。
「生徒会は、嫌いか?」
『・・・面倒だと最初は思いましたが、今は結構楽しいです。』
「そうか。」
その後は特に会話はなかった。
ただ、満足そうに笑う会長がいただけだ。
『・・・終わりました。会長・・・会長?』
珍しい。腕を組んで寝ていた。
やっぱり疲れてたのか。
『会長ー。』
つんつん肩をつついてみたが起きない。
とりあえずしゃがんで会長の顔確認。
綺麗な寝顔だな。
その瞬間、会長の眼が開かれて。
あ、ヤバい。
そう思ったけど、時既に遅し。
片手を掴まれ、もう片方で腰を抱かれ。
「人の寝顔覗くなんて中々悪趣味じゃないか。」
『会長、んっ・・・』
ちょっと意味がわからないどころじゃない。
何故、会長にキスされてるんだ、俺は。
「お前は隙が少なすぎるから、一芝居打たせてもらったよ。」
『や、何で、俺ですか。』
「ただの一目惚れさ。お前が落とした物を、拾って渡した時に凄く可愛い笑顔だった。もう一度見たくて、強引に生徒会入れたのに、全く笑ってくれない。」
そりゃ、あんだけ強引に生徒会入れられれば警戒しますが。
『ありがとうございます。あれ、宝物だったので助かりました。』
「・・・ちょっと待て。僕の告白の返事は。」
不機嫌そうに、睨まれた。
『今は、お答え出来ないです。』
「・・・はあ?・・・あまり、ふざけるなよ。」
そう言うと俺を押し倒してきた。
『ちょ、シャツの中に手ぇ入れないでくださ、』
「うるさい。もうこうなったら既成事実作ってやる。」
完全に身の危険を感じたので、突き飛ばした。
「っ貴様。」
『このバ会長・・・!』
「なんだと・・・?」
まだ余力があったのか、今度は会長が俺の首に噛みついてきた。
『いっ、』
冷たい声が響く。
「逃げられると思うなよ?」
閉められたカーテン。
かかっている鍵。
そして、たった今消された電気。
「もう、誰も残ってないし、ましてや生徒会室に、誰かいるなんてさ・・・誰も思わない。」
謀られた、もう、全て遅かった。
だけど絞り出すような弱々しい声で、会長は告げるのだ。
「好きだよ、遊羽・・・」
会長、今、どんな顔してるんですか?
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