繚蘭学園
5
深夜になっても繁華街は酔っ払いの会社員達で賑わっている。
そんな中酔っ払いの介抱係の若い社員は、上司の愚痴を聞きながら大変そうだ。
「うぇ…飲み過ぎた。」
「大丈夫ですか?」
ワイシャツの第二ボタンまで明け、一至も千鳥足でフラフラと弥尋に付き添われ歩く。
いくら暦では秋に入った、とTVではいっててもまだ暑い。日本特有のベタつく蒸し暑さはまだ続きそうだ。
「家はどこなんですか?」
弥尋は背中を摩りながら困ったように一至に問う。
「もう終電ないからビジネスホテル泊まるからいい…。ほっといてくれ。」
「…でも。」
終電はとうに終わっていた。家に帰っても一人暮らしの一至には誰かが待ってる事などない。
タクシーも長蛇の列で並ぶ気を失せさせる。
「わかりました。一番近いところ探しますね。」
弥尋がジーンズから携帯を取り出し、検索を始めた。
一至はその間ボーっと人の波を観察しながら地べたにしゃがみ込む。
浮かれている人、せかせか家路に向けて歩く人。
そして、楽しそうに談笑しながら歩くカップル達。
だんだん惨めになっていく。同じ時間、同じ場所でもそこには自分とは全く違う時間が流れていた。
「…見てくれだけか。」
今一番嫌いな台詞を自分で発してみる。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!