繚蘭学園
19
居場所がない。
振り切ったまではいいが、またしても拒絶するような形になってしまった。
「なんだよ…。同じ顔してるからって。」
年下の癖に。振り払わない弥尋にも苛立ちを覚えた。
イトセン――
最近、兄弟校の一つ、私立繚蘭学園から人事異動でやってきた若い物理教師のあだ名。
一至と年も近いせいか何度か言葉を交わし面識はあった。
伊藤司(いとう・つかさ)先生に呼び出されたと言うことは職員室にどのみちいくと言うことだ。
「…ッ――。」
年甲斐もなく泣けてきた。こんな形で振り回されて、調子が狂う。
いつもの綺麗な顔を保っていられなくなり破顔した。
「―――アハハで…ね。」
重い足取りで職員室前まで行くと、楽しそうな笑い声が聞こえる。
なるべく顔を合わしたくない。気づかれないように忍び足で自分の席まで歩いていた。
「あ、真壁先生。お帰りですか?」
「…ハイ。そうですが何か?」
鞄に書類を詰め帰宅準備をはじめると、一至の気配に気付いた伊藤が声を掛け、席を立った。
伊藤のデスク脇には真尋と弥尋の姿がある。
「……。」
さっきまであんなに伊藤と楽しそうに喋っていた真尋が睨み付けてきた。
「さっき合いましたよね。真壁センセ…でしたっけ。」
厭味な程綺麗で、許したもの以外は絶対にテリトリーには寄せ付けない。
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