繚蘭学園
16
どのくらい時間が経っただろうか、伊藤は淡々と教えるだけで何も学校を休んだわけを聞いてこない。
髪の色も、特に口に出すことはなかった。
時計の針がうるさい。
中休みに母親が茶菓子と飲み物を持ってきてから買い物にいくと出かけていた。
「ねぇ、何でウチまで来るんだよ。」
真尋は不遜な態度を表出する。同じ空間に、しかもマンツーマンで指導されていることに憤りを感じていた。
「受け持ちの生徒が学校にこないから当たり前だろ?」
「ってか、アンタこそ僕なんかに構ってていいの?」
「今日は非番だ。それを返上して教えてるんだ。別に生徒思いの先生…だろ。」
鼻で笑われたような気がして押し黙る。
この状況が至極厭わしい。
「ウチのクラスで一人だけ留年されても私のメンツが立たないし、君の成績も下がりっぱなしだしね。」
「どうも。出来が悪くてすいませんね。」
皮肉を吐き仰ぎ見ると、表情一つ変えない伊藤に勃然していた。
「じゃあ次…。」
「ねぇ、伊藤…先生?」
「何だ?」
真尋の問い掛けに教科書の頁をめくる手が止まる。
「先生幾つだっけ?彼女とかいんの?ねぇ、僕を買ってくれない?」
流し目で淒艶な碧眼を伊藤に向けた。学校内ではあまり直視したことがなかったが、顔もまずまずで悪くない。
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