繚蘭学園
10
いっそ弥尋に笑い飛ばして貰いたかったのかもしれない。
そうすれば、どんなにダメなヤツで取り柄は顔だけなのかを自分で認識できる。
話して行く内にカラカラ音を立て、一至が指先で氷を回して遊びはじめていた。
「…俺は、一至サンは綺麗だし性格も悪いと思わないですよ。」
真っ直ぐな瞳で弥尋が一至の視界に飛び込んでくる。
「俺、一至サンのこと好きですよ。話し相手にもなりたいと思ったし、だから…。」
「サンキュ、だけど慰めならいらない。俺は大丈夫だから…。」
大丈夫。それはただの強がり。
今日は何もかも忘れようと思ってたのが、こんなにも飲んでる内に辛くなるなんて思ってもみなかった。
「貴方のコト。最初はただの客としか見ていませんでした。でも、綺麗で繊細で傷付きやすい人なんだなって。」
「いや、お世辞はいらないよ。実際自分でもわからない。」
「一至サン…。」
弥尋の顔が近い、少しアルコールの匂いがする。
弥尋の唇がゆっくり一至に重なっていく。
魅惑的なオッドアイに吸い込まれるように、何も考えられなくなっていた。
「そんな女、俺なら願い下げです。」
弥尋がきっぱり断言する。
更に深く唇を奪われ、アルコールのせいなのかそれとも弥尋のキスが上手いのか、一至は脚に力が入らなくなっていた。
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