香蘭学園
18
顔だけではないけれど、大好きな人の大事なものを傷つけてしまっていた。
「こんなのすぐ消えるから…、残ったとしても傷の一つや二つ気にしないよ。」
「…ん。わかった。」
浬が藍の額に口づけ、笑い飛ばす。
「今日は…ちょっと疲れたかも。」
安堵して藍の膝で眠る姿は無防備で浬にしては珍しく少し甘えを見せていた。
―――
「藍ちゃんっ!」
「…利華、おはよ。」
「ヨッ!」
浬が復活すると回りもそんなに気を使わずに藍に今までと変わらず接して来ていた。
入院中で頭が混乱していた時は当たらず障らず。
藍に対して腫れ物に触るような利華と彰だったがそれも昨日まで。
どんよりしていた藍の表情も受け答えも明るい。
「ねー、浬サン元気になってよかったね。ずっと藍ちゃん暗いんだもん。」
「…アハハ。みんなに迷惑掛けちゃってゴメン。」
ポリポリと照れ隠しをしているつもりがバレバレだ。
「いいのいいの。困った時はお互い様。あ、僕がそうなった時は藍ちゃん…よろしくね。」
ギュっと腕に利華が抱き着く。
「ホラホラ、見せ付けないの!」
彰に引き離され利華が鳩が豆鉄砲を喰らったようにキョトンとしていた。
「あ、浬サンにヤキモチ妬かれちゃうもんね!」
首を傾げ、小悪魔な笑顔を藍に向けるがそんなジョークも今だから言える。
なんだかんだ言っても利華は憎めない性格だった。
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