香蘭学園
6
翌日。
藍が学園内に足を踏み入れると、既に険悪なムードが漂っていた。
「あの、南条浬が事故で入院したんだって。」
「マジ?」
朝早くからその話題で何も知らない生徒達は盛り上がっている。
今の時代、箝口令を敷くわけにも行かない。
誰かしらが藍が廊下を歩く度にヒソヒソ話し出し、まるで悪者扱い。
浬との仲を余り良く思っていない輩は冷ややかな態度を露骨に向けていた。
「藍ちゃん、おはよ…。」
同じクラスメイトの利華が駆け寄ってくると、
「何か大変なコトになっちゃってるケド平気?僕が出来ることがあれば何でも言ってよ。」
「有難う。…でも、大丈夫だから。本当、平気。」
苦笑いしながら藍が答えていた。
内心は浬のコトで頭が一杯なのにも関わらず嘘をついてしまう。
利華にまで心配掛けたくない。
腫れた目は隠せないけれど、浬が頑張っている時に自分が滅入ってはダメだと言い聞かせていた。
『あ――、望田藍。至急、保健室まで来い。』
不機嫌なんだか元々そういった人なのだろうか。
昼休みに入ると藍を呼び出す校内放送が流れていた。
声の主は校医で不躾、無愛想の真壁だ。
なのに一部の生徒から人気なのは藍には到底理解できない。
言ってしまえば少し苦手だったが、我慢して保健室まで向かっていた。
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