香蘭学園
5
病院からの帰り道。終始無言でバス亭から寮まで歩くと、太陽が沈みかけていた。
「あのさ…、心配だからウチの部屋くる?」
俯き加減の藍にいたたまれなくなった朔夜が話し掛けたが返事はない。
「オマエに何かあったら俺が南条にボコられるからそうしろよ。」
日狩も今日に限っては珍しく譲歩していた。
―――
「…望田、寝たみたい。」
「あぁ、泣きつかれたんじゃない?」
パチン、と朔夜がリビングの電気を落とすと日狩がタバコを揉み消した。
「ほら、朔チャンまで暗くなんなよ。」
「…ウン、そうなんだけどさ。やっぱ辛いよな。」
日狩が朔夜を抱き寄せ、唇を塞ぐと大人しく受け入れていた。
「俺も日狩があぁなったら…多分、同じ様に気が狂うと思うよ。」
唇が離れ、朔夜が肩に顔を埋めると小さく呟く。
誰だって最愛の人物が傍にいないと不安で堪らなくなる。
それは、皆同じ。
「平気だよ…。俺は朔チャンが一番大事で、南条も望田が大事なわけじゃん。守るモンが有るうちはいなくなんないから。」
「そっか…。」
妙にリアルに響いてくる台詞に安堵していた。
いつもは気にしない時計の秒針の音が大きく聞こえるような気がする。
胸騒ぎが隠せずに藍が居る部屋を朔夜が見つめていた。
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