香蘭学園
2
信号が赤から青に変わり、踏み出した瞬間――。
「藍、危ないッ!」
「…えっ?」
ドンっという衝撃。
目の前が真っ暗になった。
キィィィイィ――ィィィィ――!!
耳をつんざくような甲高いスキール音。
白煙とゴムの溶ける独特の臭い。
赤いスポーツカーが地面にタイヤ跡を残して止まった。
「…いたたッ。」
起き上がるとヌルリとした感触が手に付着し、嫌な予感に青ざめる。
「…か…い…り?」
ハッと息を飲む。背中に冷や汗が流れると掌に視線を向けた。
「…ぁ…。」
喉の奥が張り付いて声が出ない。直ぐさま浬を探していた。
「浬!かい…り?」
真っ白、真っ赤。
真っ暗、目まぐるしくチカチカする。
浬が力無く地面に倒れて動かない。
「…キャーァーーッ!」
どこから女性の悲鳴。それさえもモノクロ。
映画のワンシーンみたいに、通り過ぎる。
「君、大丈夫かい?」
藍にスーツ姿の中年男性が恐る恐る肩に手をかけた。
「あ…あ…。」
息が詰まって掠れた声しか出ない。
血の気が引き、ヌルリとした感触を確かめようとすると心臓が破裂しそうに危険を知らせていた。
道路に広がる浬の血液。
誰かが救急車を呼んだのか直ぐに運び込まれていた。
「嘘…、だよね。浬、起きてよ。」
藍が浬の傍で必死に泣きじゃくりながら手を握る。
救急車に一緒に乗り込むと、サイレンのけたたましい音が辺りに鳴り響いていた。
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