香蘭学園 27 そんなの言われなくとも、どこかでわかっていた。 日狩はモテるだろうし、やれる相手なら男でも女でも所構わずヘラヘラしているんだろう。 自分だけが特別なわけじゃない。 ただ兄と弟の関係。 今の状況はただの他人だってこと。 まして付き合ってるわけでもないし。 ただ、一回過ちを犯しただけ。 その為の犠牲? 沸々と沸いて来る感情に腹立たしく、それを抑えながら朔夜が苦笑していた。 寮に戻るなり、部屋に備え付けてある冷蔵庫をあけると何も入っていない。 「仕方ないか…。」 階下の自販機に飲み物を調達しに足を運ぶ。 飲み物を抱え、部屋まで戻ろうとする階段の踊場に人影がちらついた。 「あ…。」 そっと物影から覗くと日狩が制服姿のまま誰かと話している。 相手は朔夜の知らない少年、何やら口論をしていた。 栗色の髪、綺麗な顔立ちで学年毎にカラーが変わるネクタイからして年上。 見てはいけないとは思っても、気になってしまう。 『大槻君は先輩と付き合ってるらしい。』 小林が言ってたコトが朔夜の目の前で現実に確定していた。 茫然と目を見開き、息が詰まる。 こんなシチュエーションなんて見たくない。 無かったことにしよい見なかった事にしよう。 そう決心すると走って別の階段を上り部屋に戻っていた。 [*前へ][次へ#] |