香蘭学園
26
翌日―――
「やっぱ、平和が一番。」
「どうしたの朔夜?」
渡辺がきょとんとした目で朔夜を見ていた。
朔夜の考えている事と言えば今も日狩の事ばかり。
昨晩、深夜遅く日狩が帰ってきたのは知っていたが、朔夜は敢えて寝た振りを装っていた。
もう二度とあんな怖い思いをしなくないからだ。
朝も顔を合わせる事なく、早めに登校してはいたが同じクラスなのでそこは仕方ないと妥協していた。
「…いや、別に…アハハ。」
慌てて言葉を濁す朔夜に渡辺は特に気にもしていない。
「変な朔夜。」
フォークでサラダのミニトマトを突いて遊んでいた。
「あー、そういえば…。朔夜の同室の大槻君さぁ、二年の先輩と付き合ってるの?」
ストローをくわえた小林が日狩の話題を振ってくる。
「…はぁ?俺は知らないけど。」
何の前置きもない日狩の名前を出された事に一瞬ドキリと冷や汗が流れたが、すぐに間抜けな声を出していた。
「本当知らないの?クラスの奴らが言ってたんだけど。折角朔夜に紹介してもらおうと思ったのに〜。」
悔しそうに唇を尖らせ、紙パックのジュースにストローを挿す。
「アハハ。同室だからってそれ以上関わりないもん。」
言葉にすると何故か動揺し焦っている自分に気づいていしまった。
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