香蘭学園 16 紙の焼ける匂いに朔夜が目を見開いていた。 「ほら、アイツ…。」 また一枚。日狩が朔夜に写真を手渡すと、母と父以外の男。 真ん中には幼稚園児位の日狩が写っていた。 「ほら、これが現実で表面上ってヤツ。」 ライターで写真の端に火をつけ、メラメラと燃えて灰皿の中で黒い煤となった。 「…日狩…なの?」 「やっと気付いてくれてどうも。」 「どうして…。」 点と点、線と線が繋がっていく。 大槻日狩は自分の弟だと、やっと朔夜の中で確信した。 「アイツは…お前の思っているような母親じゃない。知らない男に股を開いている良がってるメスだ。」 日狩が目を伏せ、キュッと唇を噛み締め、拳を握る。 「男に狂って…俺を見殺しにしたんだ。アハハ、お前がこの女についていかなくて命拾いしたな。」 嘲笑いながら淡々と吐き出される台詞からは、計り知れない強い怨み、怒りが篭っていた。 「なんでだよ。何があったかわからないけど、母さん…優しかったし、汚い言葉でそんな風に言うなよ。」 朔夜の記憶では母は小柄の美人で優しくて笑顔のよく似合う女性。 日狩が言うような汚らわしい女性ではない。 どちらかというと清楚で理想を絵に描いたような人物だった。 信じられるワケがない。 信じたくない。 [*前へ][次へ#] |