香蘭学園
15
視線の先は宙を見上げている。
日狩がフゥと煙を吐き出すと、険しい表情で淡々と話し出す。
「偽善者ぶるのやめたら?オトモダチも家族も、何もかも上辺だけで構成されてんの。」
「はっ、大槻はそうかも知れないけど、テメーの家族は俺には関係ないだろ?」
いつもの馬鹿にしたような台詞。
日狩の云いたい事の意図が掴めない。
朔夜の憤りはMAXに近い。
「…そう、朔チャン、わかんないんだ?」
困ったように日狩が朔夜を覗き込むと、唇を塞いでいた。
フワリと、キスと言うよりは、ただ唇同士が軽く触れただけと言った方が正しい。
「…バカ…何すんだよ。」
朔夜が慌て唇を袖で感触を取り払うように拭う。
女の子ともした事が無いのに縒りに寄って日狩とだなんて天変地異がひっくり返ったとしても認めたくない。
「減るもんじゃないし、あ、初めてだった?」
「…っ、バカバカ!」
「アハハ、じゃあイイもんやるよ。」
おもむろに、財布の本来なら定期を入れる場所を日狩が探りはじめた。
真っ赤に顔を染める朔夜に差し出されたのは、一枚の古びた写真。
「誰だかわかる?」
「え…ぁ、俺?」
そこには、さっきも見た幼い頃の朔夜と日狩。
そして、母と父。
「ピンポン…、そんで…。」
ジュッ――
日狩がタバコの火種を母親の顔の部分に迷いもせずに押し付けた。
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