香蘭学園 10 朔夜が帰寮するなり、ベッドに横たわると、大きな溜め息をついていた。 「ハァ…、昼間はあんな約束しちゃったケド…イヤだなぁ。」 ゴロゴロ頭を抱えながら日狩にどう言ったらイイのかを考える。 ボフッ。柔らかいフワフワの感触が頬に当たっていた。 その正体は枕元に座らせてある少し大きめのティディベア。 何時から持って居たのか覚えていない。 カナリ昔から、寝起きを共にするアイテムだった。 「あぁ、マジ困る!」 頭を掻き毟り、気分転換に飲み物でも取りに行こうとリビングへ向かう。 「う…っ。」 そこには、何時帰ってきたのか無言で日狩がソファーでタバコを吹かしていた。 目を合わせたくない。 でも、言わなきゃいけない。 朔夜は立ち止まったまま、固まっていた。 日狩と目が合うと、蛇に睨まれた蛙如く身体が竦む。 数分の沈黙が過ぎる。 「あ、…あのさ明日友達がこの部屋来るから、騒がしくなるかも。」 朔夜が思い切って日狩に話掛けるが、緊張で吃ってしまう。 「ふーん。なら、俺出掛けるわ。勝手に使えば?」 興味無いのか、無表情な日狩の口から紫煙が吐き出されていた。 「明日、俺、誕生日なんだよね。それで…。」 「あっそう。ガキみたいにオトモダチゴッコ?」 「ハァ?…何だよ、…もしよかったらさ、一緒に祝ってくれないかな?」 小林のタメだと自分に言い聞かせ、コレも我慢。 日狩の言動にヒクついて強張りながらも笑顔を作っていた。 [*前へ][次へ#] |