香蘭学園 9 途端に、イヤそうな面持ちの朔夜に小林が即座に指摘する。 「朔夜、大槻君と仲良くないの?」 「いや、まぁ。」 仲が良いとか悪いトカ以前に、ルームメイト以上っして関わりたくない。 「あのね…。」 渡辺が朔夜の制服を引っ張るなりヒソヒソ耳打ちしていた。 「大槻君のコト、一目惚れしたらしいよ。だから誘えたら誘ってあげてくれないかな?」 「え、マジ…?」 この学園には男しかいない。当たり前だがれっきとした男子校。 他人をとやかく言うつもりはないが、小林が日狩に好意を持っていると渡辺に聞かされ驚いていた。 当の本人、小林は頬をピンクに染め恥ずかしそうに俯いている。 「ね、朔夜協力してあげてよ。」 「朔夜も仲良くなれるチャンスだし、一石二鳥じゃん。」 「うーん。まぁ、イイけど。」 斎木まで協力を求めてくると何も言えない。 「じゃ、誘えたら誘ってみてよ。」 所詮は他人事。軽く言われるが、朔夜にとっては断腸の思いだ。 それ程までに日狩に対して嫌悪感を抱いている。 ここは親友の頼み。 明日は自分の誕生日な筈なのに、小林の為、一肌脱ぐことにした。 これが知らないヤツの為なら死んでも願い下げだ。 帰寮するまでの間、朔夜は頭の中全て、その事が気が気でなく、ずっとソワソワしていた。 [*前へ][次へ#] |