香蘭学園
3
…まさかね。
先程の掲示板に書かれた名前。大槻日狩(オオツキ・ヒカル)。
何年も昔に両親の離婚で引き離された弟と同じ名前、同じ漢字。
朔夜は同室者の名前を見た瞬間驚いた。
双子ではなかった筈なので同学年ではない、人違いだと、自分自身に言い聞かせていた。
春休み中、自宅へと郵送されたカードキーを差し込み指定された部屋へ入る。
既に片方の部屋は、大体の荷物が片付いていた。
部屋の中には、朔夜の荷物だけが段ボールで無造作に積まれている。
「すいませーん。同室者の榎本ですが…。」
シンと静まった部屋に、朔夜の声が響くと、
「あぁ…?」
ベランダのガラス戸が開き、手には吸いかけの煙草、金髪の少年が朔夜を睨むように一瞥していた。
耳にはピアス、朔夜より頭一つ半くらい背が高い。
よくよく見れば、綺麗な顔立ちだが、機嫌が悪いのだろうか、無造作にセンターテーブルに置かれた灰皿にタバコを押し付け消していた。
「知っていると思うケド、大槻日狩。俺の名前ね。」
「あ、…ヨロシク。」
気まずい雰囲気が漂う。
「大槻君は外部生なんだよね?凄いな…確かテスト難しいんでしょ。」
仕方なく勇気を出して話しかけるが、黙ったまま微動だにしない。
第一印象としては、大槻日狩と言う人物にイイ気はしなかった。
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