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香蘭学園
17


二度と戻らない日々はもう一度取り戻せたらいい。
またあの場所でやりなおせたら――。

でも叶わないかもしれない。

「俺ってつくづく欲張りだよね…。」

気の抜けた体を起こして藍が歩きだす。
夕日がもうすぐ西の空へ沈むのを見ながら目的の場所、公園まで歩いた。

ギィと錆び臭いブランコは嫌な記憶を思い出す。

気づかなかったがシャツは捲くっていたにも関わらず肘まで赤く染まっていた。

「……もぅ、無理だよね。」

目を閉じるとため息が漏れる。振り返ってばかりでは前にいくら待っても進めない。
今は思い出したばかりの浬のことを早く忘れなくてはいけないと言い聞かせる。

なのに、またそれに甘えたいと思うことが欲張りなんだとも思わせた。


鎖を強く握ると応急で指先に巻いた絆創膏はみるみる赤く染まっていく。

俯けば頬に伝わる涙の粒が一つ、流れ落ちた。

その時――。

「―――藍。」

誰かに呼ばれた気がした。ビクッと一瞬したが空耳だと疑わず藍は地面を蹴る。

浬のことを考えすぎて幻聴まで聞こえだした。

耳を塞ぎ、必死に泣き出しそうになるのをこらえる。

「…こんなとこで、何やってるの?」

また聞こえだす。
今度は至近距離で、その声が聞こえた。

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あきゅろす。
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