香蘭学園
14
部屋の中には飲み干されたグラスが二つ。そこに誰かが居た形跡が残っていた。
何かに取り付かれたように急いで机の引き出しを引っ掻き漁った。
――両親が死んだ。
あの日から毎日ウチに親戚が来る。一緒に死ねば良かったのにと言われた。――
力無い藍の文字で書かれた日記の一小節はここで終わっている。
「……死ん…だ…?」
青ざめふらふらとベッドに寄り掛かり、動揺は隠せない。
どうにか平常心を保とうと意識をグラスを片すことに向ける。カタカタ震える指からスルリと落ちグラスは割れていた。
「嘘だ…夢だ…夢だ!」
真実を受け入れることができず、一人現実ではないと否定する。
その反動で割れてしまったグラスの破片が指先に刺さった。
床に数滴赤い雫が落ちていくと、痛みの向こうに何かが見えたような気がする。
「………ッ!!」
それは鮮明に――。
ひとりでに加速していく。
良い思い出も、消し去りたい記憶もくるくるとカルーセルが回るようにゆっくり、ゆっくり。そして突然パックリ開いた床に堕ちていくように一気にどん底へ落とされた。
点と点、欠けたピースが埋まって行くように。
もう少し、あと少し。
そこでブツリと切れる。
痛みの向こう側に真実が見えたのなら…。
ふと、腕に残っていた包帯の下に隠されている傷痕に藍の注意が向けられた。
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