香蘭学園
13
『――そこへは行ってはいけない。行ってはダメだ!』
シグナルは黄色から赤にかわり点滅しだす。
それが何故だかわからない。だが、深層意識の中に記憶として残されたものがダメだと忠告して頭痛を促している。
「う…ッ。」
鉛がついているかのような足を引きずり、家の門扉を開けようとすれば吐き気をもよおした。
胸元を押さえ、藍が門扉を開ければ錆びた鉄がギィと物悲しさを語るように鳴る。
「ただ…いま。」
ガランとした玄関に靴はなく、片された装飾品の段ボールたちが藍を出迎え、人気はない。
「……誰も…いないの?」
各部屋を周り、見回す。
暖かい色合いの暖炉は煤け、キッチンには薄く埃が積もる。何年も前から誰も住んでいないかのような違和感に呆然と立ち尽くした。
「……!!」
また来る吐き気に思わず口許を押さえうずくまる。
心臓が、腕の傷跡が痛む。
ようやく落ち着きを取り戻し見上げると、見てはいけないものが視界に飛び込んできた。
「……何、縁起でもない……。」
写真の中には笑う両親。その前には位牌が置かれている。
「っ……。」
急いで階段を駆け上がり、藍は自分の部屋だった場所へ向かっていた。
確かめなければいけない。
この目で見たものだけが真実なんだと――。
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