香蘭学園
11
浬の教え方は教師よりもうまい。藍は元々飲み込みがいい方だ。
授業ではさっぱりわからなかったこともすらすら解いていく。
「サンキュー、これで取り合えず赤点はとらないかな。」
「……だといいけど。」
「ウン、浬ってもっとツンケンしててイヤな付き合いづらいヤツかと思ったけど実はイイ奴なんだね。」
「……それは誉めてるの?けなしているの?」
藍と浬の距離が元通りとは言わないが、同じ時間を共有していくうちに縮まっていた。
「あ…、そうそう。中間終わったら実家に一度帰ろうかと思ってさ。」
「……え。」
忘れていたわけではない。藍のその一言に浬はたじろいだ。
「だって電話も出ないし…、まだ……わかんないんだ。」
「……。」
お互い複雑な思いに浸る。記憶がなくなりまだ両親が生きていると思い込んでいる藍、それと真実を伝えたくとも伝えられない浬。
「……どうしたの?黙っちゃって?」
急に黙る浬を不安そうに見上げる。何か悪いことを言ったのかと考えてはみても思い付かず更に覗き込む。
「……なんでも…ないよ。」
なんでもない、と言う割には暗い表情を返される。
「そ…そう。何か…俺、悪いことをしたっけって考えちゃったよ。」
藍ははにかみながら浬を気遣う。それが浬にとって何より苦痛に感じていた。
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