香蘭学園
10
何日か経過したある休日。
藍の学園に対しての緊張感も解けた。まだ記憶も思い出せないがある程度の人の顔と名前も一致し、無難な日々が続く。
浬に対して知らず知らず拒絶していた部分もあったが、所詮他人の言ったこと。
恋人だったなんてことは有り得ない。冗談だった、とその感情も薄らいでいた。
「ねぇ、寮についてる電話って外線も繋げるの?」
藍は前々から気になっていた各部屋に備え付けてある電話機に視線を落とし浬に尋ねた。
「……繋げるが…?」
「良かった。俺、ここの記憶ないし、取り合えず親に電話してみよっかと。」
ケラケラ笑いながら藍が寮に備え付けて在る電話機を空でプッシュする。
「……。」
「俺一人っ子だしさぁ…。文化祭近いし、………おかしいなぁ。…でない。」
コールするのに誰も出ない。
藍は首を傾げ何度もかけ直すがそれは無駄に終わった。
それもそのはず。
藍の元居た自宅はもぬけの殻だ。両親は当の昔にいない。
受話器を握りしめる藍に浬が咄嗟に話しをすり替えた。
「……もうすぐ中間考査だけど、どう?」
「さっぱりわかんない。そうだ、浬は学年首席なんだろ。」
「まぁ……。」
「じゃあ教えてよ。」
いそいそと教科書とノートを持ってくる。思惑道理にことが進み、藍の興味が反れたことで浬が安堵のため息をついていた。
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