香蘭学園
6
それは利華と彰に告げられたことが関係する。
『浬が藍の恋人だった』
と、言われたあの時から変に意識して身構えてしまう。自分もトイレで出くわした人の様にいかがわしい…それに準ずるようなことをしていたんだろうか、と聞きたくてもなかなか言い出せない。
浬が立ち上がると備え付けの冷蔵庫の中を物色しだし、グラスに氷を入れる。
「……浬は……どこまで俺の事知ってんの?……わけわかんなくて…苦しくなる。」
その後ろ姿に藍がポツリと本音を吐き出した。
自分だけが知らない時間が過ぎていたと思うと苦しくなる。
「……どうしてそんな事、聞くの?気に…なる?」
浬は深く息をつくと藍にアイスティーをグラスに注ぎ差し出した。
「疲れてるんだよ…、きっと。」
カラカラと氷が小気味よい音を立て、室温に溶かされとけていく。
藍は水滴を指でなぞり、グラスに口付けた。
「大丈夫…、飲んだら少し落ち着くよ。」
「……。」
喉を潤す液体はよく冷えてガムシロの量もミルクも藍ごのみに調節されている。
そんな事を考えながら次第に瞼が重くなっていくのは浬に撫でられる心地よさのせいか。
うつらうつら肩を揺らし、睡魔に襲われる。
「……藍。」
もう浬の声は藍には聞こえていない。
睡魔で瞼も重く全身から力が抜けていた。
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