香蘭学園
4
どこになんの教室があるかを知らないと言う割に何となく勘だけで藍が広い校舎内を走る。
階段を下り、廊下を足早に駆け抜けトイレに逃げ込んだ。鍵をしめ、ひたすら息を殺して利華と彰が諦めるのを待つ。
「…なんだよ。」
そうつぶやいた矢先、隣から奇妙な声が聞こえてきた。
「……?」
人の気配に思わず身を竦め便座の上に足を抱え息を止めた。
「…ばか……さかんじゃねーよ。」
それは一人ではない。
「いいじゃん。キスだけでいいから…。」
「ん……ってかキスだけだろ、そんなとこさわんな…、ぁ…あっ……。」
その声は段々と艶を増していく。直感的にマズイと気付いたのか藍はそっと利華と彰がいないことを確認し、トイレを出た。
「…藍…?」
出たところで呼び止められる声に振り向く。
「かい…り…?」
「さっきサテライト終わったから迎えに行こうと思ったんだが…。」
浬は藍の行く手を阻むように立ち止まる。Sクラスのサテライト教室はこの先にある教室で行われているためたまたま通り掛かった浬が藍を見つけていた。
「……何…。」
「…寮、一緒に戻るよ。」
藍が訝しい視線を浬に向ける。身長差のせいで睨みをきかせたはずが上目使いになっていることを藍は知らない。
藍の目の前に浬が腕を差し出すと浬が藍の手を有無を言わさずに掴んだ。
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