香蘭学園
3
やっと一日で藍が覚えた名前は利華、彰、そして同室の浬の三人。未だに一々確認しなければアヤフヤで名前が混同してしまう。
「あぁ、浬サンの名前まで忘れちゃったの?」
「うーん、藍ちゃん……浬サン……どう?」
利華と彰が一生懸命に藍に話を振る。それは浬が藍を教室まで送ってきた際に事情を聞いた為、何か少しでも藍の記憶が戻ればと手助けを浬から頼まれたからだ。勿論、利華と彰は拒否するはずもなく快く買って出ていた。
「……どうって…いい人だとは思うけど、それが何か?」
「あのね、藍ちゃんは浬サンが好きで浬サンも藍ちゃんが好きなの。」
「そうそう、言わばラブラブ恋人同士。…それも…思い出せない?」
彰が重傷だと嘆く。
「……嘘だ…!」
藍が立ち上がりすぐに否定した。
信じられるわけがない。
浬は今の位置付けではいい人なのは承知してはいるが所詮同性。
「藍…ちゃん…。」
「そんなの嘘だ、……みんなで俺が何もわからないことをいいことに口裏合わせてるんだろう!!」
「「……。」」
今の藍には何を言っても逆効果だ。利華と彰はどうしていいかわからず顔を見合わせた。
「……もう…帰る!」
「藍ちゃん!」
藍が教室を飛び出し、利華と彰は後を追うが意外に逃げ足は速い。
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