香蘭学園
2
起きたら家ではなく、寮といった共同生活に知らぬ間に変わっていた。呆然とする藍は浬に制服を着せてもらいネクタイまで締めてもらう。何がどうなっているのかもわからぬまま現実に戻され、まるで昔話の浦島太郎状態だ。
本当にここに自分が存在していたのかがまだ理解できずにいたが、直ぐにそれは理解することになった。
「この前席替えしたからここが藍ちゃんの席。」
窓際の後ろから二番目。そこが藍の席だ。
利華に先導され藍が仕方なしに席につくと、引き出しの中には授業で使っただろうプリントが入っていた。
「俺……の字。」
癖のある右上がりの文字。細かく書き込まれた字は正真正銘藍の字だ。
「ね、何か思い出した?」
「……ごめん。……まだ…わかんないや……。」
くしゃっとプリントを掴むがまだ、思い出せない。
ここに存在していたことは夢じゃない。藍は記憶を思い出せないことに眉間に皺を寄せ難しい表情で引き出しの中を見つめていた。
授業内容はまるでわからない。藍はふて寝を決め込み全ての授業が終わるまで目を覚ますことはなかった。
「……ちゃん?」
「望田……?」
呼ばれる声に跳び起きると、いつの間にか放課後に差し掛かりクラスの半分は既にいなくなっている。
「……!!利…華…と、…彰……だよね?」
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