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香蘭学園
1


右も左もわからない。
混沌とした闇を抜け、俺は身体の痛みも、記憶さえ何もかも忘れたいと願い…、


たどり着いた場所は――。

「藍ちゃん、良かった。」

「……。」

「利華だよ!忘れちゃった?」

「利華……。」

名前を言われてもわからない。
見慣れぬ光景に藍が立ち尽くす。

知らない。
此処が何処なのか、着ている制服がいつの間にか学ランからブレザーに変わったのかも。
そしてクラスメイトの名前さえも聞き慣れぬ名前ばかりに戸惑っていた。教室だってこんなに綺麗じゃなくもっと簡素で―――違う。

不透明な記憶は曖昧で気味が悪い。自分の名前である

『望田藍』

その名前だけは一致していた。


「……利華…だっけ?」

「なぁに?藍ちゃん。」

「あの……。」

藍は何を話して良いか口ごもる。利華の存在は覚えている限り"昔から継続して在る"ものではない。今日初めて知って、今日初めて話した。

いっそ平行世界に来てしまったのでは、と思い込んでしまった方がいいのか……。

ただ、藍にも自覚はあった。左腕に残る傷痕、両手に残るなにかに圧迫され擦れた痣。そして、朝シャワーに入った時に気づいた違和感。

「大丈夫?……浬サンは……。」

「かい…り…あぁ、同じ部屋の人…。ここに連れてきた…。」

利華は困ったように首を傾げ、何も覚えていない藍を席まで連れていった。

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あきゅろす。
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