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香蘭学園
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浬に憧れる輩は多い。それは頭脳、家柄、性格、どれ一つとってもパーフェクトなためだ。怒るといったことは滅多にない、見せたこともない。それどころか寡黙な誰にたいしても分け隔てなく接する王子様的存在だった。ただ厳めしく心を許したもの以外の他人を寄り付けない孤高の存在。

「ねぇ、…藍が何をした?俺の好きなヤツ虐めてたのしかったかよ!!」

浬の言葉遣いは荒くなる。普段絶対といっていいほど口に出さない暴言めいたそれには周りも縮み上がった。羽田の襟を掴み今にも殴り掛からんばかりに見下し、宙に浮いた拳がわなわな怒りに震える。


「おい…南条。」

それは振り下ろされることはない。ただ中立の立場で傍観していた日狩に呼び止められ、興奮した浬の拳は力をなくした。

「……っ。」

「……ケホ、…ッ…ケホ。」

緩む浬の指の隙間をかい潜り、むせ返った羽田が尻餅をつく。後退り、初めて公に怒りをあらわにした浬を見上げた。

「……失礼。だけど、……君達のしたことは許せない。この代償はキチンと払ってもらう。」

「……あ…あ…。」


穏やかな口調とは裏腹に冷えた軽蔑の眼差しで後ずさる羽田を一瞥すると、日狩に預けてあった藍を愛おしそうに抱き抱え浬がその場を去った。

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