香蘭学園
13
「…なんだ…?なんか感じ悪いな…。」
首を傾げ、逃げ去る後ろ姿を怪しむ冷たい視線で追っていた。
「あ、浬サン…藍ちゃーん。浬サン迎えにきたよ。」
「あ、…ちょっと待ってて。」
Aクラスには利華の遠くまで聞こえる甲高い声が響く。その後に藍が慌てて返事を返した。
「慌てなくてもいいのに。」
バタバタと駒鼠が滑車を回すが如く忙しく動き回る藍を見て自然と浬の目が細くなる。
「もー、藍ちゃんは浬サンくるの待ってたんだよ。」
「そう。雨宮、いつもありがとね。」
「どういたしまして。僕で良かったらクラスでの藍ちゃんのことは何でも聞いてくださいね。」
自慢気に利華が胸を叩く。
寮では同じ部屋でも藍と浬ではクラスが違うせいで、クラス内のことをよく知らない浬にとって利華が逐一報告してくれることに感謝していた。この様子からすると今日も特に変わりはないようだ。
「じゃぁね!また明日。利華、バイバイ。」
「藍ちゃんもねー。気をつけて帰って…って、寮だからすぐそこだけどね。」
「ウン。」
帰り支度の調った藍が利華に別れを告げると、浬と並んで寮まで帰る。
…が、ヒソヒソとどこからともなく聞こえてくる話し声と決してよいとは言えない種類の視線が刺さっていた。
ここ二、三日は全くといっていいほど嫌がせはない。
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