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香蘭学園
9

「―――っ。」

「…っく。」

汗ばむ肌と肌が密着し、その後の余韻を楽しむ。キスをして、耳たぶを甘噛みされ幸せの真っ只中。

「好きだよ、愛してる。」

直球で回りくどい言い方は絶対にしない。キザだと思いそうな主演俳優がさながらの台詞も浬だからこそ似合う。

「…そんなこと言われたら…恥ずかしいよ。」

「別に今更恥ずかしがることもないだろ?」

「でも…。」

愛されることに不安は募るばかりで、自分が浬に対して阿る言葉や行動が伴っているとは思えなく不満が残る。それを汲み取ったのか、そのままの藍でいいからと少し癖のある髪を浬が指にくるくると巻き付け口づけた。

本当によく出来た恋人だと思う。

一見、近寄りがたい雰囲気を醸し出してはいるが、容姿も性格も男女問わず好かれる浬は藍にとって自慢できるものの一つだ。ただ優しいだけでなく、腕に刻まれた傷痕に関しても諌められたことでこれ以上増えることもなくなった。

何もかもが順調で安寧な日々、多少の嫌がらせがあったくらいではへこたれない。浬の恋人であることに相応しい人間になり、おおっぴらに公表しても恥ずかしくないようにしたい。
そう願っていた。

だが、現実はそううまくいかず見えない壁がその願いを拒む。

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あきゅろす。
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