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香蘭学園
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お互い割り切った付き合いで他人に介入しようとも思わないが、目の前で繰り広げられていることについつい笑いを誘われてしまう。

「お待たせ、これでいい?」

「あ、ありがとう。」

今日は中華。エビチリと酢豚にワンタンスープと海鮮サラダ。家庭で作るような安っぽい味に肥えすぎた舌が安堵する。

パクパク食べているとジーっと視線が箸の先に落とさせるのに気づいた。

「それ…おいしそ。」

視線を送っていたのは朔夜だった。ペロリ自分の分を平らげ、まだ入るらしい。

「食べかけでよかったら…食べる?」

「マジで〜?」

「朔夜、食ったじゃん。まだ入るのッ?」

おずおず差し出せば『いただきます』と箸を手にし、藍の食べかけの海鮮サラダを食べ尽くしていた。それを見ていた日狩は呆れたように楊枝でプスプス朔夜の租借して頬張る頬を突く。

この空気が楽しい。
ギスギスした全寮制の閉鎖空間で一時の憩いの場だった。

「ぷー、お腹いっぱい。眠い…って指怪我したの?」

「ん…ちょっと紙で切っちゃって。」

食の細い藍の指先に巻かれた絆創膏が朔夜の目に留まり聞かれたが、曖昧に答えていた。

「何かされたとかではない?ちゃんと言えよ。」

横で心配そうな浬が藍の耳元で小声で話す。だが、本当にたいしたこともないのでひたすら大丈夫だからと言い聞かせた。

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あきゅろす。
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