香蘭学園
2
浬と付き合っていることは表沙汰にはしていない。
見るものから見ればわかるのだろう。
好意を持っている生徒からしたら学園始まって以来のオールマイティに何でも熟し、その上顔も家柄も良ければ近づきたい、付き合いたいと思うのが本音だ。あとから編入して来た藍に横取りされては堪らない。
そんな嫉妬心を真っ向勝負で挑めない生徒からのささやかな抵抗。
「藍ちゃん、藍ちゃんってば。」
「望田、浬さんきてるよ。」
Sクラス必修のサテライトゼミがない日の放課後は決まって浬が藍のいるAクラスまで迎えに来る。
「…利華、彰、バイバイまた明日ね。」
手を振り浬の元へ駆け寄ると、持っていた鞄を取り上げられていた。
「今日は楽しかった?」
「…ウン。…浬はどうだった?」
「俺のトコは相変わらず大槻がバカやってたけどまぁ、いつもと変わらないかな。」
今でも緊張する。こうやって並んで歩くのも話すのも一語一句にドキドキして自分に向けられる笑顔が眩しい。すっと伸びてきた腕に指を搦め捕られ、思わず赤面しながら寮までの道程を歩く。
今日あった嫌がらせを一々報告することもない。報告すれば浬に心配ばかりか、余計な手間を取らせてしまう。それに、相手にしてもらえない生徒のもどかしさや悔しい気持ちは痛いほど伝わってくる。
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