香蘭学園
18
「はーなーせっ!誰だよ、お前らッ…。」
朔夜が喚く声が響き渡る。
ジタバタ抵抗するも虚しく複数の男にトイレから出たところで羽交い締めにされていた。
「僕たち怪しいもんじゃないよ。」
「そうなり。…やっぱ榎本くんには我が校のアイドルでいてもらわなきゃ!」
十分怪しいだろうと突っ込む暇もなく不穏な空気に包まれる。ニヤニヤと怪しい笑みの向こう側に映るものは何だろうか。
「いつも大槻君がいて雲の上の人だったんだけど今日は一人なんだね。」
「は?日狩が何だよ?」
「あぁ。たまんないなぁ。可愛い顔に、その強気な口調。」
M男なのか?と疑いたくなるような台詞に朔夜の背筋が凍り付いた。
よくみればオタク臭バリバリ、オタクの典型的な模範のような容姿をしている。
脂ぎった顔にお世辞にもいかにもな黒縁眼鏡。
この光景をどこかで見たことがあった。
そう、TVでしか見たことのないアイドルの追っかけの秋葉系の過激なファンに似ている。
着ている制服を確認すれば香蘭学園のものだ。文化祭の騒ぎに紛れて変な思想の奴らに捕まったと朔夜はため息を付いた。
「つか、何?離してくれない?」
「ちょっとばかり付き合ってよ。」
後ろ手にグルグル巻にされたガムテープに阻まれ不自由な腕を力任せに引きちぎろうとしてもビクともしない。
「よいせッ!」
「わっ、マジ離せッ!」
数人に担がれ目立ち過ぎるのに誰もが催し物と勘違いしていた。
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