香蘭学園
16
それはそうと、ここまでのいきさつと言えば、朔夜がいつの間にかいなくなっていたことが始まりだった。
騒然としている中、日狩が頃合いを見計らって抜けだし裏方へ回ると慌てて朔夜を捜していた。
「あれ…、朔…榎本はどこ行った?」
「榎本君なら先輩と出て行きましたけど?…何か用事がありました?」
近くにいクラスメイトの一人は声をかけられたことにビクビクしながら日狩の顔色を伺い答えた。
別段怒っているわけでもないが、日狩が他人に声をかける事が稀なので、何か機嫌を損ねてしまったら、と焦りの表情を浮かべている。
「…先輩?誰それ、俺の知ってる奴?」
「さぁ…、3年の椎名さんって方で結構有名なんですが、大槻君が知っているか…。」
「……。」
日狩の表情が一段と険しくなり眉間に皺が寄っていく。一言も喋らず見下ろされればその場にいた誰しもが固唾を飲んだ。
「…あの馬鹿!ちっとは自覚しろよな。」
チッ、と舌打ちをすれば辺りはとばちりを喰らいたくないが為、いそいそと与えられた仕事を探し蜘蛛の子を散らすように日狩から離れていった。
「日狩くぅーん、まだぁ?」
「あ゛っ!?」
イライラが募る。あと30分。
交代の時間までが長く感じていた。
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