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香蘭学園
14
思い出したくなくとも一度焼き付いた光景は消えてくれない。

いつだか日狩が女遊びに耽っていた時は実際に見たわけではないので具体的な状況が掴めないが、今回はハッキリと見てしまった。

あんなに距離を置こう、弟の幸せを思うならと思っていたのは自分の筈なのに実際そうなると胸がはち切れそうに痛む。

痛い、苦い、苦しい。
キリキリ締め付ける感情はやり場がない。

「気にしない…。気に…。」

気にしないように呟く。

「…榎本?」

「…南条?」

朔夜がビクリと肩を震わせ振り向くと南条浬がいつからかそこにいた。

「大槻ならさっきそこで女と歩いてたけど追わなくていいの?」

「あ、あぁ…知ってる。」

「あ、そう。」

特に話すことなどない。素っ気ない返事を返せばモヤモヤしていたものが怒りに変わっていた。

(もう、あんな奴知らない!二度と口聞いてやらない。)

男子トイレに駆け込み、勢いよく洗面台の蛇口を拈ると泣き腫らした顔を冷水で洗う。
もうどうでもいい。
鏡に映った自分に言い聞かせた。

少し目の縁が赤みがかっていても暫くすれば元に戻るだろうし他人に何か言われれば何とかごまかせるだろう。

ギュッとネクタイを正し気合いを入れていた。

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あきゅろす。
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