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香蘭学園
13
いっそのこと見なければ良かった。

当たり前、と覚悟していたのだが教室内を見回してもやはり日狩はいない。
どこかで見間違いだったと言い聞かせたいのにあれが日狩だったという事実。

日狩に合いたくない。

それを悟られたくないが為に椎名に一言ことわりを入れ、そそくさ裏方へ回ると指先だけだった震えが体中にまで広がっていた。

つい数分前、隣の空き教室にいたのは間違いなく日狩だった。

クルクルの茶髪に短い制服のスカート丈の女の子と日狩のキスシーンを思い出し愕然と肩を落とす。

朔夜は自分の唇に手を当てると嵌めていた手袋が濡れていることに気づいた。

「おっ…かしいな…。」

無理矢理笑顔を取り付くってもそれとは裏腹にどんどん溢れ出してくるモノは流れ出していく。

当たり前が当たり前じゃない。矛盾しているとわかってていても、流れていく涙は朔夜の心内を表している。

「ちょっと…そこ邪…魔。」

「あ、ごめん。今どくから…。」

「泣いてるの?…客に何かされた?」

朔夜が涙を拭い立ち上がるとクラスメイトの一人が洗い立てのカップをテーブルに置き心配されていた。
すぐに否定するが彼はポケットからハンカチを取り出し背中をさする。

「ちょっと休んでれば?」

普段ろくに話したこともないのにも関わらず優しく接してくれたのが少し嬉しかった。

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