香蘭学園
9
着々と準備された文化祭当日。
「うわ…ダサッ…誰が考えたんだよ。」
日狩の怒りの怒号が飛び交う中、幕が明けた。
「ようこそ。Sクラスへ。」
白い手袋に黒のタキシード。本格的な燕尾服でないだけまだマシなのかもしれない。南条浬は相変わらず何を着ても様になっているのに関わらず、日狩はというと…。
「カッタリィ…マジ、しんどい。」
蝶ネクタイの片側をプラプラさせ指で遊んでいた。
「こちらはクオリティシーズン茶葉を使用しています。」
ニッコリ営業スマイルが板についている浬のお陰で他校から来訪した女子学生と普段話し掛けることがなく、こういった機会を待ち侘びていた生徒達は陶酔するような眼差しで長蛇の列が出来るほど並んでいる。
「こんにちわ…。お嬢様。」
始まれば始まったなりに、かなり無理のある笑顔で棒読みな台詞の日狩も取り分け女子に人気だ。
「朔…夜君?」
「あ、ハイ!」
暇そうに頬杖をついて忙しそうな二人のやり取りを朔夜が傍観していた矢先、あの人が現れていた。
「…忙しそうだね。君のクラスは凄い人気だ。」
そう、一緒に文化祭を回ろうと誘われた椎名がニコリと朔夜を見つけるなり柔らかく微笑んだ。
「アハハ…。忙しいのはあの二人だけで俺は暇ですよ。」
カチャカチャ茶器をセットしつつ踵を返す。
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