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香蘭学園
5
学年からして3年なのはネクタイの色で瞬時に判別できた。

「何?」

朔夜が上から下まで訝し気に一瞥すると、困ったように首を傾げ微笑んだ。

「僕は椎名宗一郎(しいな そういちろう)。別に怪しいもんじゃないけど…。」

彼の名前には聞き覚えがあった。
先日の手紙の贈り主で、顔は全く知らなくとも名前だけは鮮明に覚えている。

「んぐ…。」

「あぁ驚かせてしまってごめんね。」

思わず食べかけのパンが喉に詰まり目を白黒させている朔夜に椎名がペットボトルのお茶を差し出した。

有り難くそれを受け取り飲み下すと再び朔夜が見上げる。

「手紙、読んでくれたかな?」

「あ、ハァ…。」

頭の中には手紙の内容が浮かんでくる。綺麗な花の便箋に達筆な文章。
今まで何度となくこの学園で告白やら何やらされてはいたがピンと来る相手ではなかった。

それ以前に日狩のことはこの際置いといて、男には興味がなかったはずなのに物腰の柔らかさ、丁寧な口調は変な気分に錯覚を起こす。

「誰か好きな人とか…いるのかな?良かったら返事だけでも聞かせてくれると嬉しいんだけど。」

「……好きなヤツですか?」

改めて考えてみると脳裏には日狩の意地悪そうな笑みが思い浮かぶ。

違う、絶対違う。
一人で苦笑しながらないないと否定した。

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あきゅろす。
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