香蘭学園
20
「ちゃんと捕まってろよ。ニケツはまだマズイんだけど…安全運転でいくから。」
藍は、頷くと浬に抱き着き背中に頬を寄せる。
バイク独特の下から突き上げる感覚に眉を寄せながら何も考えないように浬につかまる指先に力が篭っていた。
幹線道路を走り抜け、高級住宅街に差し掛かるとそこには列なるように高層マンションが立ち並んでいる。
「ついたよ。」
スタンドを起こし、浬が藍に手を差し出すが、藍は不安と罪悪感後ろめたさからその手を咄嗟に振り払っていた。
「……ごめん…なさい。」
「……。」
ひんやりとエアコンの効いたエントランスを無言のまま浬がエレベーターのボタンを押せば待つことなく、扉が開く。
強引に手を引かれエレベーターの扉が閉まるとシンと静けさが苦痛で気づけば距離を置くように対角線状に立っていた。
「おりないの?」
「……。」
最上階で止まり、長い廊下を浬の後ろについて歩く。
「…なんで俺を避けてる?」
浬は突然立ち止まり、くるりと踵を返し藍を見下ろした。
壁に押し付けられ、逃げ場はない。見上げると無表情の浬から視線が背けられず体が凍り付く。
「あ…あ…。」
言葉が出てこない。
凍てつくような冷たい視線に立ちすくむとカタカタ脚が震えだす。
「…俺は、藍の何なの?怒ってるわけじゃないけど、あからさまに拒否されたらいい気しないよね。」
浬は、ため息を付き呆れた様に言葉を漏らした。
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