香蘭学園
19
藍の頭の中に浮かぶもの。
『怖い。』
その感情が、浬が悪いわけではないのに、会いたかったはずなのにも関わらず避けてしまう。
「あ…あ…あ。」
「藍?…どうかしたの?」
いつも藍だけに見せる浬の笑顔が曇る。
「藍ちゃん怖がってるじゃん!」
「俺、何にもしてないけど…、藍?何かあったの?」
「何もしてないって、何かしたからこんなに怯えて…。」
浬はため息をつくと、優しく藍の肩を摩った。
「藍?何があったの?迎えにきたから帰ろ…。」
「………。」
浬がしゃがみ込むと藍が肩口に顔を埋め、嗚咽を漏らし頷く。
「僕、お邪魔だったかな…?もしかして、浬サン…が悪いわけじゃなかった?」
少し悲しげな表情で利華がボソボソ喋る。
「利華…迷惑かけちゃってごめ…。」
心から申し訳ないと思っても今はそれさえ言うのもままならない。
「…浬サン、あとは任せます。叩いてしまってすいませんでした。」
「…いや、電話ありがとう。」
軽く利華が会釈をすると家へ戻って行った。
「帰ろ…。どうする?藍の家に送ろうか?」
背中を摩り、浬が聞くと藍は縦に頷くことはなく逆に震えが止まらなくなる。
「じゃあ…ウチくる?」
「……ウ…ン。」
バイクのキーを取り出し、藍にヘルメットを被せ、後部座席に座らせた。
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