香蘭学園
18
ピタン――。
天井から露が藍の額に一粒落ちる。
「…ッ?」
藍は目が覚めるとすっかり長湯をしていたことに気付き、急いで脱衣所へ向かった。
「……?」
騒がしい雑音が外から聞こえてくる。着替えを済まし、引き寄せられるように外が見える窓辺に手を付き、外の様子を伺う。
門扉が開き、黒いバイクにフルフェイスヘルメット、スーツ姿のここの家の護衛と何やら口論を始めている。
「…かい…り?」
間違いない。
顔はよく見えなくとも見慣れた体躯だけで藍はバイクに跨がりシールドを開けたヘルメットを被っている人物が浬だと確信した。
ふと視線を外すと利華が小走りで出て行き浬がヘルメットを脱ぎ、声は聞こえなくとも騒ぎが鎮まる。
スタスタ利華が浬に歩み寄り、見上げると、――バチン!!
ここまで聞こえてきそうな平手打ちが浬の頬へ下されていた。
「利華!?浬!?」
藍は何が二人の間でおこっているのかわからず、とにかく玄関まで走る。
「見損なったよ!藍ちゃん傷つけて最低!喧嘩なら上等。まさか浬サン相手に…。」
「利華!!」
利華が言いかけた途中で藍が利華の名を叫んだ。
普段温和な一面しか見たことのない藍はその表情にハッとさせられていた。
「藍ッ!」
「……かい…っ。」
浬が手を伸ばし、触れるか触れないかの距離。思わず反射的に藍が後ずさる。
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