香蘭学園
17
四方を桧に囲まれた脱衣所。暖かい木の温もりと、良い匂いが立ち込める。
衣類を脱ぎ、姿見用の鏡に裸体を映す。
鏡の中のには痩せた身体に何度となく凌辱を受けた跡が藍の身体に残されていた。
不意に来る数時間前の恐怖でその場にうずくまり、また涙が溢れる。
「藍ちゃん開けるよ?タオルと下着持って来た…よ。」
「……り…か。」
藍が振り向いた時には既に驚愕の表情の利華が目を丸くして立ち止まっていた。
「…泣いてる…の。浬サンに酷いことされたの…。」
「……。」
言葉が詰まる。
何と言ったらいいのか藍が黙っているとタオルを手渡し、無表情で何も言わず脱衣所の扉を閉めた。
シャワーで全てを洗い流す。甘ったるいバニラの香りが今では嫌気がさして眉間に皺を寄せる。
ドロドロした体液も、跡もタオルで皮膚が真っ赤になるくらいまで擦って落とす。
が、擦った所で汚れは落ちても落ちない跡に腹が立つ。
湯舟に浸かる頃には稲葉の白兎状態。ヒリヒリと皮がむけたところにお湯が滲みる。
眠かった。
無性に睡魔が襲ってくる。
どこからが自分なのかわからくなっていく感覚、胎児が母体の中で息を潜め産声をあげるまでの間のように膝を抱え、目を閉じた。
我慢していたものが全部流れていってしまえばいい。
そう切実に願うことで精一杯だった。
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