香蘭学園
13
身体が痛い、胸が痛い。
それよりも浬への想いが膨れていく。
また振り出しに戻された様な気がして来ると涙が出た。
かったるい身体に鞭を打ち、服を着ると震えでボタンがうまく留められない。
「……望田…。」
「……。」
絢斗は正気に戻ったのか、申し訳なさそうに声をかけてくるが藍には聞こえていなかった。
必要最低限のものが入った鞄を持ち、藍が出ていく。
「好きなんだ…。だからもし、戻ってくることが…あったら…。ずっと待ってる。」
絢斗は淋しそうに藍の後ろ姿を見つめ、出ていくことに無理に引き止めようとはしない。
「これ、鍵かけてポストに入れといてくれればいいから…。」
藍は振り返ることもせず、キーケースからスペアの鍵をなげると覚束ない足取りで消えていった。
「うッ…ぅッ…。……。」
近所にある広い公園のベンチに座り、藍が啜り泣く。ずっと堪えていたものが爆発したように涙が途切れない。
鬱蒼とした外灯がまた、侘しさを余計に醸し出す。
女の子じゃないのに、合意の上でなくとも女の子の様に喘いで受け入れてしまったことへの罪悪感は暫く消えそうもない。
携帯のメモリーを弄るにもディスプレイが涙で滲む。
会いたいのに、合う資格も声が聞きたくとも今のままではそれも出来ない。
いっそのこと身体と心が切り離せたらと考えていた。
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