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香蘭学園
5

「いないよ…。ウチ、男子校だし女の子いないからサ…。」

言ったそばから胸がチクリと痛む。

隠すつもりはなくとも、此処は学園のような閉鎖された空間ではなく、ごく一般的な世界。

「…そっか…男子校なんだもんな…。で、楽しい?」

「ま…まぁね。」

ズシリと鉛の様な重さが胸を圧迫する。

「男子校ってさぁ…やっぱホモとかいるの?望田とか狙われそうな部類だし。」

「い…いないよ、みんな…いい人達だし。」

絢斗の何気ない一言に胸の鉛は重さを増す。

全て話しても構わないのだが、その一歩が踏み出せない。

「ふーん。見ない間になんかかわった?」

絢斗が目を細め、藍を見据える。

「…え?そう?何も変わってないけど。」

「何となく、…雰囲気が優しくなった気がする。おじさん達が亡くなってからあまり笑わなくなったし…。」

「そ…っかな。」

藍は絢斗から変わったと言われて思わず照れ笑いしていた。
内部事情までは知らないとしても絢斗から見て変わったと言われれば本当に変われたのだと、自信が沸いて来る。

「絢斗の方はどう?学校、何か変わった?」

「いや、何にも…。いつものメンバーと相変わらずバカやってる。」

「そっか…。」

楽しい時間は刻々と過ぎ去っていった。

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