香蘭学園 18 「わからない…。」 それが正直な気持ちだった。死にたいとも生きたいとも違う別の感情。 浬は曖昧な藍の言葉に怒りを隠せないが、敢えて落ち着いて話し掛けた。 「過去に何回もしているだろう。それ、もうするなよ。」 目線が腕に刺さるように注がれる。 「…多分。」 「馬鹿。赤の他人じゃあるまいし、相談くらいしろよ。」 藍は浬と眼を合わせたくない為に目を伏せた。 「…藍、ごめん。何もわかってあげれなくて。」 浬に抱きしめられ、そこから心地良い体温と、規則的な心臓の音が伝わってくる。 「かい…り…?」 自然と強張った体が弛緩し、大人しく浬の腕の中におさまった。 「自分を傷つけるなよ。俺の前くらい素でいろよ。」 冷え切った身体に染み入る様に囁かれる浬の声。 嬉しいのか、みじめなのか、それともその両方。 藍の緩んだ涙腺から涙が溢れ出す。 深夜から降り出した雨が、アスファルトを打ち付ける。 空一面の景色を灰色に包みこむ夜明け、カーテンを明けると冷気が窓を曇らせていた。 泣き腫らした瞼の藍が浬のベッドで小さく丸まって眠る。 あの後、藍のことが心配だった浬は一緒にベッドで眠りについた。 震えた体はとても傷ついていたと改めて知る。 何度も躊躇ったのだろう。藍の腕にはガタガタの傷痕が沢山残っていた。 [*前へ][次へ#] |