香蘭学園
17
ようやく腕の中で収まりかけた藍が浬を突き放し、一定の距離を保とうと身を翻す。
「離せよっ…どうせ、浬だって…俺なんかいなくなればいいと思ってんだろ…。だったら返してよ。…望みどうりいなくなって…。」
バチン―――
激昂をあらわにした藍に訪れたのは、乾いた破裂音と頬に走る痛み。
振り向くと今までにない浬の怒りに満ちた形相が目の前にあった。
「……。」
目の前が真っ暗から真っ赤に変わり、急に正気に戻された藍の体は、震えが止まらない。
カタカタ震え、倒れそうな身体を壁に寄り掛からせる。
「叩いて、…ごめん。」
浬がそう呟く。
藍から果物ナイフを奪い取る際に、刃先を握ってしまったのか、浬の掌からも血の雫ができている。
血の気が引いた藍は俯いて、目を反らす。
「それ、手当てしてやるからこっちにこい。」
「…どうして。」
浬に手を引かれると、まるで構うな、と言うように藍が反発していた。
「お前…何がだよ!?それとも病院いくか?」
イヤダと無言で首を振り、仕方なしに付いていく。
浬が腕の手当てする為に消毒し出すと、今の傷以外にも、無数に有る傷痕に息を飲むのが聞こえた。
幸い、深いと思っていた傷痕は見た目以上に軽く、浬の手によって綺麗に白い包帯が巻かれていった。
「…お前、死にたいわけ?」
淡々とした口調で浬が藍に聞く。
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