香蘭学園
16
必要以上に誰かに関わる必要はない。そう、いつからか心に決めていた。
人はいつか裏切る。
心を開いても、いつだかわからなくとも。
ドクン――
そう思った矢先、突如として、衝動が走った。
藍はベッドから抜け出し、かに促されるかのように脇目も振らずキッチンへ駆け込んだ。
シンク下に有る果物ナイフを手にし、迷う事なく腕に充てる。
「…いッ…ッ。」
そして一気にそれを引いた。
赤い線が新しく刻まれ、腕からは生暖かい血が溢だす。それが腕を伝わり床にポタリポタリ、こぼれ落ちた。
ぷっくり滴は球になって、小指を伝う。
「おい…ッ、何やってるんだ!」
「かい…り…?」
藍が声のする方向へ目を向けると、自室で寝ていたであろう浬が立っていた。
「バカっ、それ離せよ!」
「イヤだよ、邪魔しないで…!」
浬は目の前で起こっている事態に、慌てて藍を押さえ込むが、藍は更に深く新しく違う場所に刃先を食い込ませようする。
「…ったく!何が起こってんだよ!」
浬が声を荒げ、力ずくで藍手中から果物ナイフを取り上げてようとしていた。
「浬ッ、返せよ!浬だって実は俺のコト邪魔だったんでしょ…?」
「何がッ!?」
藍は、先ほどから錯乱状態で手の付けようがない。
細い体のどこにこんな力があるのか、ジタバタ暴れる藍を宥めた。
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