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香蘭学園
15

ジメジメした雨の匂い。
愚図ついた天気は人の心を曇らせる。

黒い誰かがせせら笑った。

『邪魔なんだよ。』

『一緒にいってくれればよかったのに。』

『あなた一人で何ができる?』

無情な言葉の羅列が耳元で囁く。

『藍もこっちにおいで…』

死んだはずの父と母までもが手招きしながら映し出される。

動悸が止まらない。

気持ち悪い。

手足が酷く冷たい。

涙が止まらない。

腕が疼く。

その感情を押し殺していた筈が、やけに頭の中で響き続ける。


「ゆ、…夢!?…っ…!!」

藍が飛び起きると時計を確認していた。
寝汗でビショビショの毛布が張り付いて気持ち悪い。
エアコンのドライ機能が作動しているにも関わらずそれ以上に腕が熱かった。

「あ…。」

ベッドサイドの電気をつけると、爛れた傷痕がクッキリ映し出される。
治りかけなのに、疼く。

ここ最近、自然と笑えたはずなのに、笑えない。

利華に話し掛けられてもどこか上の空。折角忘れてかけていたのに、無理矢理にでも思い出させる。

手首に絡みつく赤い傷痕。
逃れたいと思うのに、逃れられない。

幸い、あの衝動はこの学校に来てから一度も出ていなかった。

浬とは、それなりにお互いの距離を持ちながらも上手くやっている。

話し掛けられれば話すし、そうでなければ話さない。
それでいいと思っていた。

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あきゅろす。
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