香蘭学園
7
「…!!」
「あ、起きた。」
「…ここどこ!?」
目を覚ました藍の目の前に、物珍しげにしげしげと覗き込む切れ長の真っ黒な瞳が映し出された。
「…寮。」
彼が立ち上がるとあまり普段喋らないのかそっけない返事を返される。
濡れたような艶の真っ黒な髪にオニキスの瞳は冷たく微笑む。
「……そっ、…か。そうだよね。」
藍は寝起きで頭が働かないのを隠すように彼に背を向けた。
「理事長からは大体は聞いてはいるけど、俺は南条浬。…で、君は?」
抑揚の無い淡々とした口調で自己紹介を始める。
別に刺があるとか、厭味とかではなく、事務的な喋り方に恐怖心が芽生えた。
「…も、望田デス。望田藍です…。」
「じゃぁ、呼ぶのは藍でいい?俺も浬でかまわない。」
「あ、ハイ。…浬…サン。」
恐怖心からか、震えが止まらず、被っていた毛布を力いっぱいにぎりしめる。
「ねぇ、飲む?」
「えぁ…。ハイ…。」
何のことだか全くわかっていないが、マグカップを差し出され受け取ろうとした瞬間、慌てて左手を隠そうとすると手が滑った。
「…どうかした?」
「ごめん…なさい。」
床には粉々に砕け散ったマグカップの破片と琥珀色の液体が飛び散る。
反射的に怒られる、と思い、身を縮こませ目をつぶった。
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