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香蘭学園
6
リビングにはセンターテーブルと坐り心地の良さそうなダブルソファー。

両側に各一部屋ずつあり、ミニキッチンを始め、トイレやユニットバスまでもが完備され、高校の寮としては立派すぎる。

「ふぅ…なんか疲れた…。」

持っていた手荷物と、運び込まれた段ボールを少しばかり片すと、慣れない移動に疲労感が漂っていた。

藍が、ソファーに横になると睡魔が襲ってくる。

いつの間にか、ウトウトしているうちに眠っていた。




――なんで生きているの?
『どうして俺だけ生きているの?』

誰かが話し掛けてくる。
何故か息苦しい。
吐き気がする。

親戚たちの露骨に不快感をあらわにした眼差し。

初めて深く傷つけたときの痛みがフラッシュバックする。
両親が死んだ時のこと、思いも出したくないのに焼き付いて離れない。

藍が目を開けると、血まみれの車内。咽返るほどの血の匂い。

『お願いだから、起きてよ…。』

神に祈るように何度も呟いていた。奇跡は起こると思ったのに、起こらない。

あの時はずっと泣いていた。泣いても現実は変わらないコトは、百も承知だということは知っている。

熱い。

喉が渇く。何が熱いのか知っていた。

痛いじゃなく熱い。
腕に食い込む刃物は熱くて、尖った切っ先は冷たかった。

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あきゅろす。
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