香蘭学園 5 藍の手の平には貰ったばかりのIDカードが収まっている。 ふと、疑問が頭に過ぎると、今思ったコトを思い切って理事長に聞かずにいられなかった。 「あの、どうして…ココに誘ってくれたんですか?」 「あぁ、君のお父さんと私の父が友人でね。君、独りで居るよりは…と、思って。」 理事長が爽やかな笑顔で返答する。 どうやら、藍の家庭の事情を全て知っているようだった。 「そうだ、寮に荷物が届いているからね。」 「あ、ハイ。」 「他に質問とか有れば聞いて下さい。」 言い終えると、理事長直々に藍を寮の入口まで案内してくれていた。 寮の前、藍が独り見上げると、その大きさに息を飲んだ。 巨大な建物は、とても高校生が住む寮とは思えない。 入口には防犯用の監視カメラ、一階のロビーは大理石の床に寛げる様にかソファーが並び、グランドピアノまであった。 何処かの高級マンション。いや、億ション並の豪華さだ。 藍は早速エレベーターに乗り込み、カードキーに印字された部屋へ向かっていた。 5階。エレベーターが到着の合図をすると扉が開く。 暫く歩くと標札プレートには望田藍・南条浬(ナンジョウ・カイリ)と金文字で彫られていた。 手にしたカードキーを差し込むと、カチリと鍵の開く音と共に扉が開く。 誰も居ない。白を基調とした部屋はシンと静まり返っている。 [*前へ][次へ#] |